■ご挨拶:次の50周年記念に向けて


末廣昭
2003年12月5日

 2003年11月9日の常務理事会で、財団法人アジア政経学会の新理事長に選出されました末廣昭です。伝統ある学会の大役をおおせつかることになり、身の引き締まる思い、髪の毛がますます抜ける思いでいます。タイという比較的狭い分野で研究を続けてまいりましたので、視野も経験も決して十分とはいえません。理事ならびに会員のみなさまのご協力を支えに、2年間、なんとか任務をまっとうしていきたいと考えておりますので、みなさまのご支援をなにとぞお願い申し上げます。
 1997年の通貨危機を契機に、日本のアジア関与はますます強まってきました。同時に、アジア諸国、アジア地域に対する関心も格段に高くなっています。このような状況のもとで、50年の歴史と1300名の会員を擁するアジア政経学会に対する期待も大きいものがあります。こうした期待にこたえるためにも、会員同士の交流を密にし、学会の活動を内外に向けてますます強化することが必要になっています。これまでの活動を引き継ぎながら、少しでも新しい機軸を打ち出したいと思っていますので、みなさまのご協力をよろしくお願いいたします。

 さて、アジア政経学会は現在、大変厳しい環境のもとにおかれています。すでに何度も大会その他でお伝えしましたように、長年、機関誌『アジア研究』の出版を支えてきた外務省の補助金が、2003年度から打ち切りとなりました。また、長期不況の影響で維持会員の数も激減し、学会の財源はひとえに会員のみなさまの会費で運営することを迫られています。その一方、公益法人(財団法人)に対する所轄官庁や総務庁の指導・監督は、近年ますます厳しくなっております。実際、2003年度には外務省のほうより「恒久的な事務局の設置」などの指示が出されました。このような事態に対して、わたしどもは次のような体制で取り組みたいと考えています。
 第一に、制度改革委員会を新たに設置し、規約と組織体制の見直し、事務局の設置など、公益法人に見合った体制への取り組みを開始します。
 第二に、負担の多い業務担当理事の「若返り」(可能な限り40代の理事へ世代交替)と、業務補佐体制の強化によって、よりサステーナブルな事務局体制づくりに取り組みます。
 第三に、同様の問題を抱えている他の学会と協力・連携しつつ、恒久的な事務局の共有体制の可能性などを模索します。学会業務の一部を引き受けてくれそうなNPOとの連携も考慮中です。
 第四に、学会の財源の確保と安定化のために、会費以外の収入源の検討とさらなる経費の削減に努めます。
 
 一方、学会活動の柱であります研究大会と機関誌『アジア研究』の編集・刊行につきましては、次のように考えています。
 第一に、2002年度の神戸大学における全国大会から、フルペーパーの提出を条件に「自由論題」の報告を大幅に拡充しました。会員の報告に対する希望はきわめて強く、今後とも大会における報告者の拡充と質の向上に努めるつもりです。また、大会とは別の研究分科会の開催も考慮中です。
 第二に、最近では大会の準備状況と報告用のペーパー、報告要旨を、随時、学会のホームページに掲載するようにしてきました。今後はよりいっそうホームページを活用し、会員のみなさまがより迅速に、またより直接的に他の会員の研究動向について把握できるように努めます。
 第三に、最近の世界情勢は特定の国、特定の地域に限定した課題設定をむつかしくしています。アメリカの世界戦略、中国とASEANの経済連携強化、上海と中央アジアとの経済連携、中東を含んだ「アジア協力対話」の登場など、特定の地域を超えたテーマが浮上しています。さいわい、アジア政経学会は東アジア、東南アジア、南アジアの三地域をカバーし、同時に幅広い専攻分野で活躍する会員を擁しています。このような貴重な人的資源を活用したテーマ設定にも取り組みたいと考えています。
 第四に、この2年間のCOEの公募で、アジア研究に関連する多数の大規模事業が、さまざまな大学で始まりました。こうしたCOE事業、あるいは他の地域学会、特定研究プロジェクトとも連携しつつ、場合によっては「共催方式」の研究大会や国際シンポジウムも考えていきたいと思っています。これは先に述べた財源の制約のもとで研究活動を広げるための可能性とも関係しています。
 第五に、『アジア研究』は早くから厳格なレフリー制を導入し、質の高いアジア研究学術誌として高い評価を得てきました。また、新しい装丁のもとで、会員の投稿論文の数は着実に増えています。2003年度に実現した「アジア政経学会優秀論文賞」の設置により、今後はますます投稿が増える見込みです。このような動きに対応するために、『アジア研究』の編集体制をいっそう強化する所存です。さらに、2003年から作業を進めています『アジア研究』創刊号からの全論文、研究ノートのホームページにおける公開も、できるだけ早い時期に完了したいと考えています。

 以上、思いつくままに並べてみました。学会の進展はひとえに会員の熱意とエネルギーにかかっています。熱い声援とともに、忌憚のないご意見をお待ちしています。

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