■ご挨拶:理事長就任にあたって


慶應義塾大学 国分 良成

 財団法人アジア政経学会が誕生したのは1953年、それから53年の歳月が流れた。私が学会に入会したのが大学院博士課程のとき、1980年前後であったと記憶している。それからもすでに25年以上の歳月が経過したことになり、私は学会の約半分の歴史を知っていることになる。留学やどうしても外せなかった海外出張を除き、この25年間、ほとんどの大会に出席したのではないかと思う。特に、最近の過去10年は財務、総務、国際、50周年、研究など、業務担当常務理事として学会運営の中枢に携わってきた。この間、学会は改革の連続で、実にいろいろな課題に直面した。
 学会業務はすべてボランティアであり、この10年間、運営に参画してはじめて、先達の本学会に対する脈々たる思いを感じることが多かった。振り返れば、アジア政経学会は一貫して私の研究生活の中心にあった。その意味で、このたびアジア政経学会の理事長に指名されたことを誇りに思うと同時に、この学会に対する学恩に報いるべく2年間の重責を全うしたいとの思いを抱いている。
 アジア政経学会を半世紀にわたる歴史のなかで評価すると、次の3点が直ちに脳裏に浮かぶ。第1に、本学会こそが戦後日本の現代アジア研究の基礎を築いてきたという事実である。先達は先見の明をもって、本学会に「政経」という名称を冠した。だが、いまや名実とともに日本アジア学会と呼ぶに相応しいまでに質・量ともに充実してきた。英語の名称はすでに、Japan Association for Asian Studiesとなっている。
 第2に、本学会は日本におけるアジア研究者を多く輩出し、現代アジアに関する研究と教育の面での先導として多大なる貢献を果たしてきた。年1回の全国大会、年1回ずつの東日本大会と西日本大会、機関誌『アジア研究』の年4冊の刊行、現在は停刊したが現代中国研究叢書の刊行などが主たる活動として挙げられよう。
 第3に、本学会は日本における現代アジア研究の中心として国際的アカデミズムの世界と交流を重ね、質において絶えず国際水準を目指してきた。折々に開催された国際シンポジウム、現在の全国大会では必ずプログラムに組み込まれる英語セッションなど、さまざまな国際化の試みがそれである。
 それでは、以上の成果を踏まえ、アジア政経学会は今後どのような方向に進むべきであろうか。第1は、組織と制度化のさらなる確立である。本学会は財団法人であり、過去何年かの改革は財団法人としての体裁を整えることに集中していた。評議員、理事会、寄付行為、事務局など、末廣昭前理事長のもとでこれらの改革が抜本的にしかも手際よく進められてきた。今後は、この改革を引き継ぎ完成させなければならない。
 第2に、今後とも本学会は研究と研究者の質と量の両面において、日本の現代アジア研究の先駆とならねばならない。もちろん本学会は唯我独尊であってはならず、他の学会とも手を携えて日本のアジア研究の向上に努めなくてはならない。この場合、本学会は今後の課題として、「政」と「経」のバランスを取り他の学問分野も積極的に歓迎し、中国研究に偏りがちなアジア研究を朝鮮半島、東南アジア、南アジアなどの他の地域研究とバランスを図り、研究の年代やジェンダーに配慮し、東京一極集中も避けなければならない。
 第3にさらなる国際化の推進である。これまでも韓国のアジア研究の学会やアメリカのアジア学会との関係確立が模索されたことはあるが、結局長続きしなかった。アジア研究はまさに世界のブームであり、そうした各国・各地域のアジア研究との研究上のネットワークと、実際の交流を促進・確立することが求められている。
 以上、理事長就任にあたって、アジア政経学会に対する率直な私個人の思いを綴ったが、もとよりこれらが私の任期のうちにすべて解決されることはないだろう。しかし2年後、学会の後輩たちにうまくバトンタッチすることによって、アジア政経学会に脈々と流れる日本のアジア研究への熱き思いを伝えていきたい。

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